
群雄割拠する喫茶店業界。年々喫茶店数が減少する中(図表1)「今後の喫茶店業界はどのような展開をしていくのか?」匠ニュースレターでは、今までに培ったコンサルティングのノウハウ、消費意識調査、空間利用(店舗内の動線、立地動線、立地の特徴、商圏調査)、統計解析のノウハウを利用した「仮説立案」と「検証手法」をつかって、利用実態を調査し、今後の展開の方向性を東京都23区のエリアで検証してみました。
| <トピックス> 1.従来の喫茶店業態に浸透した新たな「カフェ業態」 ・今までの喫茶・カフェ事情(’70年代~) ・今の喫茶・カフェ事情調査(顧客による他多様化。新橋アンケート) 2.MACカフェの大々的な宣伝はコーヒーチェーン店の王者「スタバ」の 王座を狙っているのか? ・薄いアメリカンコーヒーではない、プレミアムコーヒーでの実録対決!? 双方の違いはどこにある? 3.コーヒーチェーン店のそれぞれのライバル店はどこ? ・意外!客層が違うと思われた「マック」と「ドトール」がガチンコ対決となる!? ・ドトールの空間利用の向上と、フードメニュー構成は? ・スタバとタリーズ、方向性はフード? スイーツ? ・新しいターゲット獲得はできるのか? 4.これからのカフェ事情 ・今後の喫茶・カフェはこうあるべき! |
70年代の喫茶店では、オーナーの嗜好性が全て(味、メニュー、食器、厨房機器、内装、BGMなど)に渡って醸し出され、来店するお客様に満足感を与えていました。音楽が好きなオーナーは音楽に、料理が得意なオーナーは多くのメニュー(後に外食産業化)が提案され、特徴を出していました。現在のパスタハウスの原点は喫茶店という意見もあります。結果的に、どちらもお客様とのコミュニティ形成が繁盛の要因となりましたが、来店の目的自体(「飲み食い」か「余暇の楽しみ」か)は、大きく異なっていました。今でも、この二つの傾向は同様であると思います。
オーナーの嗜好性が強い業態でしたので、至る所にこだわりが入っていました。給仕されている食器もその一つで、ウェッジウッド、ロイヤルコペンハーゲン、マイセンなどでコーヒーを出す店舗も多く存在しました。現在では、衣料品と同様、お客様は、ブランドよりデザイン重視の傾向が強くなっているので、ブランド食器による給仕より、名前は有名ではないのだが、「おしゃれ~、かわいい」などの感性が付加された食器で給仕するほうが喜ばれるようになりました。また、セルフサービスの店舗では、今では一般的になっている蓋付きの紙コップを、スターバックスコーヒーが開発し、紙コップでコーヒーを飲むことが、逆におしゃれな感じもするようになりました。今では多くのコーヒーショップチェーンで使用されています。
その後、70年代も後半になると、ジャズ喫茶、クラシック喫茶などは、時代の波とともに少なくなりましたが、急激に増加したのが「インベーダーゲーム」が設置してあるゲーム喫茶でした。100円をゲーム機に入れて遊んでもらうことで、飲食以外の収入が確保されました。その後、麻雀、競馬など、ゲームの種類が増えました。博打を目的に利用し摘発される例もありました。しかし、それらも家庭用ゲーム機器の普及などにより、完全に姿を消してしまいました。
同じ時期に登場してきたのが、サーファーブームを背景にした「カフェバー」です。1978年9月にはサーファーファッション雑誌「ファイン」が創刊されていますが、アメリカ西海岸ストリートファッションに身を包んだ陸サーファーたちが街を闊歩するようになりました。彼らが好んで遊び場にしたのが、店内にヤシの木があったり、大きなファンが天井に回ったりしている「カフェバー」であり、好まれる飲料としてバドワイザーが日本のビール市場で広がりました。コーヒー自体は薄味のアメリカンコーヒーであり、それらは、主に男性に飲まれました。当時の女性はコーヒーより「紅茶」を飲むことが多かったようです。
80年代に入り、ドトールコーヒーが現れます。「朝の一杯」をテーマに、当時では破格の一杯160円で販売されました。それまでは喫茶店でコーヒー一杯450円が相場だった中、いかに安価だったかが伺えます。しかしこれが、一般市民の生活にセルフサービスによる「カフェ業態」そのものが広範囲に受け入れられるキッカケに繋がったのかもしれません。
85年のプラザ合意により「円高」となり、円高不況が来ました。円高によるコスト増加の回避を狙って、体力のある企業の工場が海外に移転してしまう事態が増加し、産業の空洞化が大きく進行してしまいました。これが地元経済に直接的な打撃を与えて商店街が衰退化し、同時に個人経営の喫茶店も衰退していきました。現在、70年代以前から営業している喫茶店(古き良き、古典喫茶)は、神保町などの都心の下町など、かろうじて地元経済が回っているエリアだけになってしまいました。地方、地域のこだわり喫茶は激減していきました。 喫茶店は、地域経済のバロメーターといっても過言ではないと思われます。

90年代に入ると更に大きな変異が訪れます。バブル経済に突入し、オフィス街でのビジネスも非常に盛んだった頃です。それまで「コーヒーを飲むなら喫茶店」「来客へのコーヒーは喫茶店」という流れがありましたが、レンタルで、オフィスへのドリップマシーン導入により「オフィスでも落としたてのコーヒーが飲める」に変わったのです。
コストダウンに加え、外出を要するタイムロスもなくなります。結果、ビジネスマンという需要も少なくなり、古き良き喫茶店は次々と閉店に追い込まれていきました。同時に、昼に定食などを出していた飲食店が、食後のコーヒーを出すことが多くなり、一方、喫茶店側も「食事」に力を入れるようになり競合が激化。さらに、純然たる喫茶店が減少していきました。
そんな中、90年代半ばにはシアトル系カフェ「スターバックス」が日本に初上陸します。セルフサービスで、ドトールよりも高価で、深煎りコーヒーを提供する。今まで国内にない業態であったので、当初は「苦戦するのでは?」と思われていましたが、当時の海外旅行ブームに加え、海外のサービススタイルをお洒落に感じたのか、若いビジネスマン、OLからの大きな支持を得て拡大軌道に乗り成功をおさめます。
後を追うように、同じシアトル系カフェであるタリーズコーヒーも日本へ出店します。喫茶店での軽食は、ラフなスタイルを求めてか、焼きたてパンやサンドウィッチなど、ベーカリー提供へ変化。また喫茶店で出されていたパフェやショートケーキ等の甘味は、クッキーやムース等々の洋菓子へと変化していきました。それが今日のチェーン店カフェ、お洒落カフェの基盤となりました。
また、スターバックスが上陸したことによって、大きく日本のコーヒー業界に貢献したことは、「女性がコーヒーを飲む機会が増えた」ということです。具体的な統計はありませんが、以前、女性は、どちらかと言えば「紅茶」を飲むことが多く、積極的にコーヒーを飲んでいたイメージはありませんでした。しかし、スターバックスの登場により、コーヒーの「ファミリーレストランなどで煮詰まった、美味しくないコーヒー」というマイナスイメージが消え、コーヒーを飲む機会が増えたと推測されます。美味しいコーヒーを出していた喫茶店にとっては、逆に追い風になったようです。(喫茶店オーナーインタビューによる)。メニュー構成も従来のコーヒーだけでなく、「キャラメル系」に特徴があります。これが女性への人気の秘密であると考えられます。観察調査やアンケート調査においても、「キャラメル系」に支持が高いことが分かりました。 スターバックスは、20代、30代の「現代の甘味処」と言えます。
また、前述の蓋付き容器もコーヒーを飲むスタイルを変えました。「トラベラーリット」と呼ばれるものですが、もともとホットのドリンクをテイクアウトするときにこぼれにくいことと、蓋をしたまま穴から飲むと、保温効果があるということで使われています。しかし、他にも、エスプレッソの上にスチームミルクと下のコーヒー部分をバランスよく飲めるように設計してあり、蓋をしたまま飲むことを同社では勧めています。今では、蓋を外して飲むことは、若い人たちにとっては、「ありえない」ことのようです(中高年ではストレートのコーヒーを飲むのに、このふたの口は熱い!飲みにくいという方々もいますが・・・カフェラテなどの用途向けなのですが・・・)。
時代背景は、スターバックス上陸の翌1997年に山一証券が倒産するなど、バブル経済崩壊時期にあたります。節約はしたいが、バブルの時期に味わったおしゃれニーズ、飲食業に関する高度化されたニーズ、ちょっと贅沢して甘いものを食べたいニーズなどをスターバックスが満たした形となりました。
他方、女性ターゲットとしては、ライフスタイル向上をテーマに、物販店舗と複合のコーヒーショップも登場します。コーヒーの提供を副次的なものと捉え、他の商品やサービスと複合させたカフェです。複合的なカフェの初期の営業形態は、衣料の高度化が進み、生活全体にライフスタイルを充実する傾向が強くなった80年代において、ライフスタイルを提案する業態で発生し始めました。中でも積極的であったのが生活雑貨を販売する業態でした。代表的な企業としては、1981年に東京・広尾でグラスワークショップとして開業した「F.O.B COOP」が挙げられます。同店舗は、1986年に京都・北山で、フレンチスタイルのカフェを併設したショップをオープンしています。最終的には、90年代の大手資本による展開(アフタヌーンカフェ・ティルーム、カフェコムサなど)にまで、影響を与えることになりました(スターバックスでも、コーヒーカップやバッグなどの雑貨が売れているようです)。
90年代後半に登場以降、多店舗展開を実現し好調を維持していたスターバックスやファーストフード業界の王者マクドナルドも、2001年の世界同時多発テロ後の不況、2002年のITバブル経済崩壊の影響を受け、赤字に転落してしまいます。しかし、スターバックスにおいては、不採算店舗の閉店やサービス力向上策を地道に継続した結果、黒字へと再転換します。
2005年ごろから今日まで、カフェ業界の人気は衰えを感じさせません。都心では吉祥寺や代官山、自由が丘などのお洒落タウンに次々と出店し、そのエリアだけでも一冊の本が出来てしまうほどです。集客率の高さと顧客である若者の注目度・関心度の高さがわかります。
また、現在のカフェは形態そのものも多様化しつつあります。居心地の良い空間と飲み物を提供していた喫茶/カフェ。それが神保町での本とコーヒーを提供するカフェを始め(恐らくこのタイプは昔からあったと思いますが)雑貨や自然食販売、インターネット、漫画等を提供するスペースと併設・融合されているカフェなどが登場しました。
顧客は自由に目的をもってカフェを利用出来るようになりました。複合カフェの登場です。

1995年にマイクロソフトからウィンドウズ95が発売されると、一般的な家庭でのパソコン普及率が急激に高まりました。同時に、通信のインフラが整備され、誰もが簡単にインターネットを活用できる土壌ができあがりました。このような状況を背景に、既に欧米で出現していたネットカフェ業態が日本にも登場し、店舗数が増加しました。ここ数年の光ファイバーを使用した高速通信網の普及、通信業界の価格競争によるコスト低下の下、さらに市場が拡大しています。 これらの業態のターゲットは、当初、ビジネスマンもしくは、遊びを楽しみたい人に分けることができましたが、とくに、最近は、遊びを楽しみたい人に対する市場が拡大しています。中心顧客は、10歳代後半から40歳代の比較的若い層ですが、これらの層は、ネット普及以前の同年代に比べ、インターネットの操作などが自然と身についており、個性的で多種多様な趣味・嗜好を持つことが多い層です。そういった傾向に対応するために、さらに店舗が新しいソフトや設備(最新版の漫画やゲームソフト、その他ビリヤード、ダーツ、マッサージチェア等の遊興設備など)を準備するといった複合化現象が加速する状況となっています。
2007年3月に日本能率協会研究所が複合カフェの利用者を調査した、利用実態アンケートレポートが公表されています。同レポートによると、利用目的は、第1位「漫画を読む」(57.4%)、第2位「パソコンを利用する」(53.8%)、第3位は「インターネットを利用する」(47.9%)、第4位「時間つぶし」(42.6%)、第5位「雑誌を読む」(28.4%)、第6位「休息をする」(26.0%)、第7位「飲食をする」(23.7%)、の順で続いています。 また、利用時に重視する点では、第1位「利用料金が安い」(52.7%)、第2位「漫画が充実している」(49.1%)、第3位「施設が清潔」、第4位「席あたりのスペースがゆったりとしている」(32.5%)、第5位「24時間営業している」(31.4%)、第6位「ドリンクメニューが豊富」(30.8%)となっています。 業態運営のポイントとしては、「時間制約のストレス排除」と「リラクゼーション」がキーワードとなっているようです。 これらの業態の一部として、メイド喫茶などが秋葉原に出現するに至りました。
喫茶店は、お客様の様々な要望を満たすことが求められています。では、最近の喫茶店事情を把握するためにどうしたらよいか? 匠ニュースレター編集チームは、新橋駅前で、簡単なアンケート調査を実施することにより仮説を立案することを考えました。