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ここまでやるか、匠ニュースレター

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匠ニュースレター 「喫茶店業界調査報告」

 


4. 匠が考える、これからのカフェ事情

 喫茶店を利用する際の選択基準の中で、「くつろぎ」と「味」が大きな要素でした。これらの要素を「くつろぎ」=「コト本位」、「味」=「モノ本位」と考え、さらに対人的なサービスの度合いを加え、今後の4社の方向性を探ると下記のような図になります。

 


  スターバックスは、セルフサービスの中で、更なる対人サービスの重視と「コト本位」を強化、ドトールコーヒーは、現状より対人サービスをやや強化し、「コト本位」を強化、タリーズコーヒーは、対人サービスを強化しながらも、「モノ本位」を強化、マクドナルドは、更なる「モノ本位」を強化していくという方向性です。

スターバックスコーヒーの今後

 スターバックスコーヒーの課題は、既存店舗の売上高増加です。そのためには、現状のお客様の満足度を上げ、来店頻度を向上させていくことが重要であると考えられます(生涯価値の向上)。マックカフェが商品(味)を強化する一方で、スターバックスは「いごこち」を重視し、主要顧客である女性やビジネスマンの満足度を向上します。
 2008年のレジャー白書(日本生産性本部)によると、「余暇時間」はどんどん減少しているとされています。一方、お金をかけても大切にしたいものとして、「家族と楽しく過ごす」「仲間と楽しく過ごす」「健康の維持・向上にかかわる」「興味のあることに知識や能力を高める」などが挙がっています。この不況下では、「近くて、安心感があり、かつ、自分を高める」という意識がキーワードのようです。従って忙しい中、既存のお客様にわざわざ立寄ってもらうためには、「近くで安心感のある店」になる必要があります。
 これまでも「いごこち度」の高いスターバックスですが、さらに「いごこち度」を上げるためには、「地域密着」の方向性が欠かせないと考えられます。ビジネス街での地域密着では、例えば顧客の顔と名前を覚えることのできるシステムを整えることや、地域企業への配達(ポットサービスの延長線の戦術)、地域企業などとのコラボレーションなどが考えられます。本国アメリカでは、「15th. AVE Cafe' & Tea」という業態で、地域の食材を調達するなど、地域密着を目指しているようです。(日経MJ)
 また、スターバックスには、よく一人で音楽を聞きながら長時間リラックスしている若者も散見されます。これらの若者は自分自身をしっかり持っているが、他人との必要以上のコミュニケーションが面倒で、「イエナカ・ライフ」をエンジョイする傾向が強いようですが、全くの一人も寂しく、家を出てスターバックスなどで過ごすことがあるようです。(社内インタビューによる) これらのお客様に対しては、顧客サービスと、実質的な回転率を高めるために、「お替わりのディスカウントサービス」の検討も考えられえます。
 さらに、学生にとっては「大人ッぽ過ぎる」ということで、若干敬遠されています(新橋アンケートより)が、新入ビジネスマンには徐々に利用が増えるようであるので、来店しやすいように、地域のフレッシュマンに対するアプローチを強化していくことも、新規の顧客獲得では重要であると考えられます(具体的には、最近の若者は朝ごはんを食べないことが多いので、健康メニューを準備するなど)。

 


タリーズコーヒーの今後

  タリーズコーヒーの課題は、さらなる認知度向上による客数の増加であると考えられます。現状の消費者の間では、スターバックスと何が違うか、あまり整理されていないようです。タリーズコーヒーには差別化できる、これというメニューが想像できないため、早急に「タリーズらしいメニュー構成」を実現することが重要と考えられます。そうすることにより、新規の客数増加につなげることができるのではないかと考えます。具体的には、店舗数が劣り、主力のドリンク類でのメニュー構成も劣るということでは、ボリュームでの集客は期待できないと考えられますので、さらなるドリンク類の開発が望まれます。基本は「カフェスィーツ(現代の甘味処)」の強化だと考えられます。
 最近スターバックスで紅茶の強化が決定したようですが、チャレンジャーとしてのポジションでは、迅速なる対応も求められます。タリーズコーヒーではそれらを上回る「ティスィーツ」の考えのもと、紅茶の好きな女性に対して、スターバックスとの差別化を図ることも十分に考えられます。
また、モーニングセットやランチセットの強化も考えられます。従前の喫茶店では定番セットなどが顧客を集めるツールでしたが、タリーズコーヒーでも、改めて「食べる商品」について、新橋アンケートにもあった、サラダやスープとのセットなど、こだわりの食材を導入して、集客をはかることが重要であると考えられます。
さらに、実際に店舗を訪問した調査員の感想では、テーブルが狭くて落ち着かない、カウンターが狭い、椅子の座り心地が今一つという意見がでました。座り心地、椅子、テーブルの変更による、利便性とくつろぎ感の向上を行わなければいけないと思われます。

 


ドトールコーヒーの今後

 今後、大きな競合になると考えられるマクドナルドで実現しづらい「いごこち感」を重視し、マクドナルドと明確に差別化していく必要あると考えられます。 主力の利用者であるビジネスマンの利用度を上げるため、ビジネスニーズを満たす施設やサービスをプラスしていくことも視野に入れていくべきであると考えられます。具体的には、インターネットができる無線LANの採用、コンセントの準備などが考えられますが、回転率の鈍化も懸念されるので、店舗を限定して導入することがベターであると思われます。
 また、メニューでは、コーヒー専門店の強みを活かした熟成珈琲豆などの採用による高品質商品をリーズナブルな価格で提供することにより、本来のコーヒー愛好者の取り込みを行うなどが考えられます。
 いずれにしても、マックカフェとターゲットが重なるので、マクドナルドでは採用しづらい戦略をとり、差別化していくことが重要と考えられます。

 


マクドナルドの今後

 マクドナルドでは、既存店舗の多さと圧倒的なローコストオペレーションから、様々な戦略が取りやすい状況であると考えられます。カフェの選択基準上位である「価格」と「立地」を満たし、支持を得ている状態と言えます。ランチェスターでいう強者の戦略がそのまま実行できるポジションです。
 これまでの戦略(朝の無料サービス、おかわり自由サービスなど)で、プレミアムローストコーヒーの存在と味が浸透しました。そこで、さらなるマックカフェの普及では、大きく2つの方向性があると考えられます。1つは、「豆へのこだわり」です。現状では、マクドナルドの「おいしくなったコーヒー」をテイクアウトで飲んでもらうという方向性のみで販売促進がなされていますが、同社のバイイングパワーから考えれば仕入れの差別化による商品訴求も比較的容易であると考えられます。特徴の出る仕入としては、コーヒー農家との大規模な契約による「無農薬・マック農場珈琲」の訴求や、社会的に意義のある「フェアトレード豆」の訴求などです。仕入金額の上昇などのデメリットも考えられますが、社会的好感を得ることによる宣伝効果は大きなものとなると考えられます。
 もう1つは、「カフェスィーツ」ラインナップの実現です。スターバックスやタリーズコーヒーは、「カフェスィーツ」を実現することにより、女性の支持を得ました。その場のいごこち感やおしゃれ感は追随することは困難であると分かりましたが、徹底的に商品にこだわることは可能です。
 現在、甘み系商品は、「モカ」と「キャラメルラテ」だけであり、マクドナルドの開発力とサービス力から考えると更なるラインナップの追加はあり得ます。また、現状のターゲットから考えると、健康志向というより、「たっぷりカロリー」の方であると思われるので、商品開発後の受け皿の心配はありません。例えば、季節限定で女子高校生が好きなドリンクの販売などはすぐに実現できるのではないかと考えられます。
 基本的にスターバックスやタリーズコーヒーとはターゲットが異なりますが、開発の手法を参考にすることによって、新たな需要がでてくるのではと思われます。

 


■ 匠が考える、これからのカフェ事情 1 「ライフスタイル」、「くつろぎ」

 今回、喫茶店業界を調査しましたが、改めて、シアトル系カフェの影響の大きさを感じました。手元にある資料(財務省:通関統計)では、2006年までコーヒーの輸入量は増える一方でした。コーヒーの美味しさを女性に再認識させ、また、テイクアウトしてオフィスで飲むという習慣はこれまでになく、食のライフスタイルまで変えてしまいました。
 これほどにまでコーヒーを飲むようになったのは、シアトル系カフェによる、酸味を抑えた「深煎りコーヒー」に依存している部分は大きいと思われます。
また、スターバックスコーヒーのブランド力の強さも改めて痛感しました。アイテム(タンブラー)販売、季節ごとのフードメニュー提案、女性向けのカスタムコーヒーの提案など、新しい取り組みは、「喫茶店」ではなく「カフェ」という業態を確立したと考えられます。コーヒーが苦手な消費者もタンブラーは持っているという事実は驚くべきことであると思われます。
 では、今まで通りのターゲットを獲得/維持するのなら今の形態、今のコンセプトでも大丈夫でしょうか。飽きられない新商品、また定番化する程の商品を今後も提供していけるのでしょうか。
 詳細なデータの裏付けなく、4企業の大きな方向性を独断で述べてきましたが、今後も、国内でコーヒーの消費量が増加していくには、根本的には、何を提案していくべきなのでしょうか。
 一つのヒントとしては、北欧諸国のライフスタイルにあると思います。フィンランドでは、日本人の約3倍ものコーヒーを消費すると言われています。(IOC統計) そのまま国内にライフスタイルを持ち込むことは意味がないと思われますが、そのエッセンスを絞り出すことによって、更なる消費の喚起があり得るのではと思われます。最近話題になることが多い生活用品専門店IKEAを生んだ「フィンランドのライフスタイル考案」については、機会を見て、また行っていきたいと思います。
 もう1つのヒントとしては、コーヒーショップの本質を如何にお客様に伝えるかだと考えられます。アンケートでもありましたように、コーヒーショップを選ぶ基準は「くつろぎ」と、本価値である「味」です。これらを徹底的に追及することではないかと考えられます。
 その中でも、「くつろぎ」は非常に重要だと考えられます。その「くつろぎ」感を追及するためには、伝統的な喫茶店が非常に参考になるのではと思われます。「男の隠れ家2009年12月号(別冊)」では、多くの古典喫茶が特集されています。それぞれのお店は、一度入ると帰りたくなくなる独特な雰囲気を醸し出しています。神保町にあるカフェ・デ・プリマベーラでは、アーチ状の店内で、こだわりのコーヒーをいただくことができますが、同時に「蜂蜜ばなな」が出てきます。お客様とのコミュニケーションの結果、サービスされるようになったとされていますが、店主の思いがそこに乗っているのではないかと思われます。
 また、札幌で有名店である宮越屋珈琲が東京・日本橋三越に進出しましたが、当店も非常にくつろぎ感のある店舗です。取材で当店を訪れたとき、フレンチローストを注文しましたが、商品の案内とともに、味が濃厚であるので「さし湯もいたします」との案内がありました。味にこだわる一方で、初めて注文のお客様に対する配慮が感じられました。喫茶店は飲食業でありながらサービス業的な部分が非常に大きく、お客様への配慮が「くつろぎ」へとつながっていくことが改めて感じられました。

 


■ 匠が考える、これからのカフェ事情 2 「味」と「起業理念」“back to the core”

 一方、「味」については、味覚だけではなく、五感すべてを満たす要素が必要であると考えられます。スターバックスが店舗を増やしていく過程では、コーヒーを飲むに当たってお客様に「劇場感」がありました。コーヒーを入れるプロであるバリスタが、お客様の前で新鮮なコーヒーをカップにとり、それを挽き、マシーンに詰めて、熱湯を注ぐ。そのときの、香り、湯気が立つ見た目の高揚感、カップに注ぐときの緊張感、お客様の期待感など、すべての感覚を360度オープンしたときに味わえる臨場感が「劇場感」であると思われます。これをもう一度見直さなければならない。2007年2月23日付けのファイナンシャルタイムズで、創業者のハワード・シュルツ氏は、当時の責任者ジム・ドナルド氏に対する手紙で、「”Let's get back to the core”(原点に戻ろう)」と言っています。
 「事業が急成長するにあたり、効率を求めるがゆえに、自動エスプレッソマシーンを使ったことにより、エスプレッソマシーン“ラ・マルゾッコ”を使った、ロマンスと劇場感が見失われた。単なるストアデザインに走ってしまった」という内容で、「近隣店舗の温かい雰囲気」を取り戻そうと、原点回帰(起業理念)を訴えています。
 これは、「何のために起業したのか」、もう一度考え直さなければならないということです。同社には、「人々の心を豊かで活力あるものにするために ~ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニケーションから」という素晴らしい「企業の使命」がありますが、チェーンオペレーションをとり、利益に注目し過ぎることにより、「人々の心を豊かで活力あるものにするために」という、最も重要な部分が欠落してしまったようです。
 現在、その他多くの企業でも、売上拡大、利益増加中心の考え方となり、起業した時の素晴らしい理念を忘れてしまっている会社が多く存在します。高度成長期にとった「効率化の弊害」「株主至上主義の弊害」が至る所で見られますが、その弊害に気がつかなく、自らの存在意義を失くしている状況です。現在のデフレ状態で今後どうやったら、「お客様に満足していただけるか」「何に満足していただけるか」、また、自分たちの「商いはどんな社会貢献を目指しているのか」が焦点になってくるかと思われます。
 規模の経済を実現するためのチェーンオペレーションは、そのもの自体は否定されるものではありませんが、市場が成熟化した現在の日本では、チェーンオペレーションのメリット・デメリットを明確にしなくてはなりません。特に、「人間性」と言った部分では、非常に弊害が多いと思われます。セルフサービス導入による顧客とのコミュニケーション場面の減少、自動マシーン導入・作業簡素化による従業員教育コミュニケーション場面の減少、POS導入による売れ筋の同質化など、「考えなくてよい」「スキルがなくてよい」「会話しなくてよい」という部分が問題になることが多いです。

 


■ 匠が考える、これからのカフェ事情 3 「企業の使命感」と「教育」

 80年代までの、需要が供給を上回っていない段階では、コミュニケーションの重要性は比較的低いものでありましたが、90年代以降は、完全に供給が需要を上回っているので、「モノ」だけでは価値が交換されません。そこに、コミュニケーションした結果が生まれる価値を付加することによって、「モノ」+「コト」となり市場が動くと考えられます。
 その「コト」にあたる部分が「企業の使命」であると考えられます。自分たちは何のために働いているのか、社会にどれほど貢献できているのか。経営者は明確に「使命」を自覚し、市場を創造し、従業員や顧客に伝えていかなければならないと考えられます。
 従って、喫茶店業界では、お店とお客様を結ぶコーヒーを入れる人(バリスタなど)の重要性がますます高くなると思われます。伝統のある企業では、しっかりと企業の使命が伝わり、お客様に満足していただく方法が確立されていると思われます。また、多くのチェーン店舗を抱える企業でも素晴らしいマニュアルが準備されていると思われます。一方、これから入社してくる若い人たちは、基本的な人間形成ができていないことが多く、教育に苦労することが多くなることが予想されます(人事関係者や教育機関関係者より)
 しかし、教育が大変だからといって、効率だけを求めた自動化や、手順をマニュアル化し過ぎると、本来の「使命」がお客様に伝わりにくくなります。接客ホスピタリティ、技術の習得には時間はかかるかも知れませんが、入社した従業員の成長度合いに合わせて、自社も成長していく。マクドナルドのような単品・価格訴求型の業態では、製造工程のイノベーションによる「モノの価値」の追求が重要ですが、価格訴求ではない業態では、スタッフの成長に合わせた自社の成長というスタンスで、自社の伝統と社風を築いていくことが、これからの喫茶店業界では非常に重要なのではと考えられます。
 2店舗のみの展開ですが、お客様の目の前でサイフォンを使用して提供している某店舗が新宿3丁目にあります。そこでは既存のお客様だけでなく、新規客の来店が絶えません。オーナーいわく、「本当のコーヒーのおいしさはバランスです。どこに偏ることなく、バランスのいい部分だけを抽出することが難しい。サイフォンは、かき混ぜすぎ、また、かき混ぜが弱くても、美味しい部分を落とすことができません。いい「加減」があるのですが、これは実際にやって見せて教えるしかないのです。」と言い切っています。ここはフレンチトーストでも有名なお店ですが、従業員教育では特にマニュアルではなく、オーナーや先輩が新しいスタッフに手取り足とり教えています。効率だけを考えると決していいとは言い切れませんが、オーナーのこだわりがスタッフにも伝わり、従業員の定着も良く、また、常連のお客様が、友だちを連れてくるといったプラスのスパイラルでカフェの激戦地で健闘しています。チェーン店においても、効率化すべき点は効率化する。一方、決して効率化してはいけないところは、頑固なまでに維持していくという部分が必要なのではないでしょうか。

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